あることに夢中なあのひとと、散歩しながら
当たり前にそばにあるものでも、なにかのきっかけで一歩距離が縮まると、目の前の景色の見え方が変わることがあります。
いつもの道で見かける花の名前が分かったときや、使い慣れた生活道具の意外な使い道を知ったときなど。
それはほんの小さな変化でも、興味のアンテナが敏感になって世界が広がったような気持ちになるから不思議です。

身近なもののまだ気付いていない一面が知りたくて、詳しい人にお話を聞いてみたくなりました。私たちが尋ねるのは、長年研究していたりたくさん収集していたり、あるひとつの分野に夢中になっている人。
ゆかりのある場所を散歩しながら、その人が見ている世界を一緒にのぞいて、目を凝らしてみたり耳を澄ましてみる新しい動画をお届けします。
初回のテーマは「ハーブ」。の予定だったけれど……

第1回目のテーマは、料理やリラックスシーンでよく目にする「ハーブ」です。
育てやすい品種が多くていい香り、名前もいくつか知っています。スーパーで売っているところを見るとちょっとお高くてたまにしか手に取らないからか、もし雑草に紛れて生えていたら……、見つけられる自信はありません。
案外、身近な割に知らないことだらけな気がします。
ハーブに夢中な人にお話を聞くために、千葉県大多喜町で「mitosaya薬草園蒸留所」を営んでいる山本祐布子(やまもとゆうこ)さんのもとを訪れました。

丸一日かけてたっぷりお話をお聞きした取材日。歩き始めてすぐに、植物とひとの意外な関係性や、庭づくり初心者から歩んできた日々を振り返っては、つい立ち止まって話し込んでしまう場面がしばしばありました。
興味のアンテナがぐんぐん広がっていくお話をぎゅっとしたら、約25分の番組に。おさんぽ番組なので “ながら見” でも気持ちよい軽やかな見心地ですが、山本さんの熱量に魅せられてついつい見入ってしまう見逃せない瞬間ばかりを詰め込んだ渾身の第一回目となっています。
9年前からこの地で庭と向き合い始めた山本さん。夫が果実やハーブのアルコールを手がけるかたわらで、山本さんがつくるのは、お茶やジャム、ドレッシングなどのノンアルコールのプロダクト。広大な土地でのびのびと育つ植物たちのお世話をしながら、魅力的な商品を生み出し、季節をともに過ごしています。
まず一緒に散歩をしたのは、「mitosaya」からほど近い場所にある「大多喜有用植物苑」です。併設しているレストランでは植物苑で育てたハーブがたっぷり入ったメニューをいただくことができます。

山本さん:
「料理でよく使うバジルは、こんもり盛ってサラダで食べるのが大好きですね。乾かしてバジルのハーブティーにすることもあります。
プランター栽培にも向いていて、いくつかの品種を寄せ植えみたいにしても育つし、枯れたらバッと入れ替えてね。
地植えと違って先客がいないから、ハーブにとっては安住の地として暮らしやすいと思いますよ」

山本さん:
「植物はパーツじゃないんですよね。
葉っぱ、枝、幹、根っこが全部繋がっていてひとつだから、いろいろなところから共通の香りがするんです。
一方で季節の流れに合わせて変化していく部分もあります。桃の木だったら、若葉のときにしか香らない桃のいい香りがするんだけれど、それはそのときだけのもの。夏の暑さに負けないように葉の繊維を強くしたり、秋には葉を落として寒さを乗り越える準備をしたりね。
一本の木が一年をとおして行う活動みたいなものにとても興味があります」
ハーブをテーマにお話を聞いていたら、植物そのものの生き方や、上手な付き合い方などさらに深く広いテーマへと枝葉を伸ばしていきました。
人間が手を添えると、もっと伸びやかになる?

植物苑のあとは、mitosayaの庭を散歩しながら案内してもらいます。
山本さん:
「ここはもともと、千葉県立の薬草園だったんです。閉園後3年ほど手付かずの期間を経て、約10年前から私たちが関わるように。
初めは下草をとる作業で精一杯でした。ツル科などの強い種類が繁茂していたところを時間をかけて手入れすると、それまで見えていなかったいろんな植物がぐんぐん育っていったんです。
一度人が手を加えた場所は、その先も人が面倒を見ないとよい状態を保つのは難しいことを痛感しました。
なにも分からないところからのスタートだったけれど、日に日に変わっていく植物たちが面白くて、希望を感じたのを覚えています」
▲ジンジャーリリーの香りが立つよう、葉をくしゃっとしてから手渡してくれました
植物に夢中な山本さんとの散歩はまだまだ続きます。
役立つ豆知識やこの先100年を見据えて今取り組みたいことなど、ちょっと難しい話も散歩のリズムにのせて、ゆったり聴けるはず。
夏真っ盛りの太陽の日を浴びて、きらきら輝く植物たちのたくましい姿や鳥の鳴く声など、眺めているだけでも心地よい番組です。
植物と暮らしているひとはもちろん、これまであまり縁がなかったひとも、試しに一度、一緒に歩いてみませんか。
【撮影協力】大多喜有用植物苑
【撮影】橋原大典
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